「お顔を乗せて、中の赤い気球をみてください」というフレーズ、眼科を受診したことがある人は聞き覚えがあると思います。眼鏡店でも初めに行う検査ですね。
眼科といえば真っ先にこの気球の検査を思いつく人も多いと思いますが、何を測定しているのか知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。
今回は眼科検査の中で1番ポピュラーなこちらのについて解説していきたいと思います。
気球を見る検査は ” 屈折検査 ”
気球が見えるのは「オートレフケラトメーター」という器械です。
大まかに眼のデータを測定し、このデータ(屈折値)をもとに視力検査を行います。
屈折値とは近視・遠視・乱視のことです。
屈折値については次の記事で詳しく解説していきます。
こちらのオートレフケラトメーターですが、大きく2種類の数値を計測しており
”レフ” と ”ケラト”に分けられます。
レフは眼の屈折値を測る
1つ目はオート”レフ”ケラトメーターのレフ部分。
前段落でも触れていますが近視や遠視、乱視といった眼の度数を測るものです。
手作業で屈折を求めることも出来ますが、ここで測定したレフ値をもとに視力検査を行うことで時間の短縮・検者によるズレを少なくすることが出来ます。
しかし全ての症例で正しいデータが取れるわけではありません。
難しい話になりますが、レフの測定には近赤外線光を使用しているため 当然光が入らなければデータは得られません。角膜の状態が悪い症例や、白内障・眼内出血などにより光の透過性が悪くなっている場合は信頼値が低くなってきます。
また、器械を覗き込むことにより眼に力が入ってしまったり眼のピント調節機能が過剰に働いていたりする場合はデータが綺麗に取れません。(本来の度数よりも近視が強くなる傾向があります)
とても便利な器械ですが、過信しすぎると駆け離れたレンズ選択をしてしまい逆に視力が出なくなってしまいます。
レフのデータを参考にして視力検査を行い、微調整を重ねて最高視力を出すことで検者の技量が問われます。
ケラトは角膜の形状を測る
2つ目はオートレフ”ケラト”メーターのケラト部分。
こちらは角膜の屈折力や眼のカーブ(丸み)を調べるものです。
「乱視が強くてブレて見える」という方がいると思いますが、乱視には水晶体由来の乱視と角膜由来の乱視があります。
この内、角膜由来の乱視度数を測定してるのがケラトです。角膜といっても角膜前面と後面で度数が異なりますがここでは簡潔に”角膜乱視”と表現します。
続いて眼のカーブについてです。
皆さんに馴染みがあるのはコンタクトレンズのB.C.(ベースカーブ)ではないかと思います。
ケラトで測定した値は、このB.C.を決定する際に参考にします。
近視や遠視の度数が人によって異なるのと同様に、角膜も人によってカーブが異なります。
コンタクトレンズは直接眼にのせる物ですので、しっかりとその人のカーブに合わせたレンズを選択しなければゴロゴロ感やコンタクトレンズがすぐに外れてしまうといった不具合が生じてしまうのです。
気球以外の種類もある
ここまで読んでくださった方の中には「自分の通っている眼科では気球なんて見ないけど器械がないのかな?」と思った方もいるかもしれません。
では、こちらは見たことがあるでしょうか?
一直線に伸びる道の先にある一軒の赤い家。
実はこの赤い家を見る検査も、気球を見るのと同じように眼の屈折を調べています。
どうしてこのように見える目標が違う場合があるのか。
その答えは単純で『生産しているメーカーが違うから』です。
どちらも真っ直ぐ伸びた道の先に赤い目標物がある点は同じですね。
オートレフラクトメーターの測定時には、正しい度数を求めるために出来るだけリラックスした状態で見て欲しいので
気球や家のように遠くにあり、かつハッキリとした色で認識しやすい目標を採用しているのではないかと思われます。※これは管理人個人の考えです。
まとめ
今回は眼科でよく見る”赤い気球”について解説しました。
- 正体はオートレフケラトメーターという屈折を測る器械
- レフでは近視・遠視・乱視の度数を大まかに測定している
- ケラトでは角膜の形状を測定している
- メーカーによっては見えるものが気球ではないこともある
屈折や眼のピント合わせ機能については別記事にて解説していきたいと思いますので
気になる方はご覧ください。